小泉八雲を原文で読もう


 小泉八雲(Lafcadio Hearn)は、晩年には日本語をだいたい話せるようになりましたが、日本語で作品を書けるまでにはなりませんでした。日本に関する数々の著書はすべて英語で書かれています。
 ここではその原文をいくつか紹介しています。海外にも「怪談」を中心に八雲の原文を読むことのできるサイトがあります。詳しくはリンク集をご覧ください。

「小詩編」(Bits of Poetry)
 俳句や短歌といった、日本の短い詩に関する紹介です。その事例も英訳つきで豊富に紹介しています。「霊の日本(In Ghostly Japan)」という本に収められています。
 これらの翻訳に際して八雲は、最初におおむね語義通りの訳を掲げ、次に「more literary(より文学的にいえば)」という言葉とともに、より自由に意味を表現した訳を掲げる、という工夫を行っています。
 八雲の詩歌に関する著作では、松江中学と東京帝国大学で八雲に学んだ大谷正信の尽力が大きかったといわれています。彼は英文学者として学生を教え、八雲作品の翻訳紹介に貢献すると同時に、大谷繞石(じょうせき)の名で俳人としても活躍しました。俳人としての彼は正岡子規に学び、松江での俳句普及に大きな業績を残しました。

「横浜にて」(In Yokohama)
 横浜は、八雲が1890年に初めて日本の土を踏んだ地であり、その後も度々訪問しています。ところが題名とは裏腹に、横浜の街の様子などに関する記述はほとんどなく、以前横浜に来た時に訪ねたという地蔵堂を再訪したときの紀行文で、内容はほとんどが仏教談義です。「東の国より(Out of the East)」という本に収められています。
 なお、この地蔵堂がどこにあったか、いつそこを訪ねたかについては一切わかっていません。現在調査中なので、何かわかったらこのホームページで紹介して行く予定です。


「送別講義」(Farewell Address)
 八雲の没後、彼の業績を後世に残そうと考えた東京帝国大学時代の教え子たちは、彼の講義を受けた時に書き取ったノートを持ちより、講義録としてまとめて出版しました。これらはアメリカで非常に高い評価を受け、代々の学生たちのノートをもとに、次々と続編が出版されました。
 ここで紹介しているのは八雲が、卒業して行く学生たちに送った言葉で、最初の講義集「文学の解釈」(Interpretations on Literature)に収められています。身分階層の低い民衆の伝承に学ぶことの大切さを力説し、最後には卒業後も文学を続けるよう説いています。これが講義に出席した学生たちによって一字一句余さず書き取られたという事実は、彼らの英語力の高さ、そして八雲の講義が彼らを強く魅了したことの証しであると言えます。


「天の川縁起」(The Romance of the Milky Way)
 「天の川のロマンス」、つまり七夕のことです。
 日本の七夕について、どんな物語で、その日にどのような祭りをしているかということについて詳しく紹介しています。中国の伝承との比較、七夕祭りの歴史や地域ごとの特徴にまで言及されており、平均的な日本人の七夕に関する知識に比較しても、非常に高度な内容になっています。
 後半は、七夕をテーマとした短歌や俳句を数多く紹介しています。


「日本の主題による海外の詩」(Some Foreign Poems on Japanese Subjects)
 19世紀後半のヨーロッパでは、浮世絵などの日本芸術に影響された「ジャポニズム」という芸術の潮流があったことが知られています。これは詩の世界でも同じだったようで、この講義からはヘルンが、日本をテーマにした詩をたくさん読んでいることがわかります。
 ヘルンはそれらの多くが、日本人からみれば間違いだらけに見えるであろうことを指摘した上で、その中でも良い作品として、高踏派の詩人エレディアの作品2編を紹介しています。


「赤い婚礼」(The Red Bridal)
 学校で出会った純朴な少年と少女が、結婚をめぐる大人たちの思惑に翻弄されて、心中を選ぶまでを、観察者の視点で淡々とつづっています。当時の日本の結婚をめぐる事情と、心中(情死)というものに対する考え方などを読み取ることができます。
 2001年カンヌ映画祭の短編部門最優秀賞受賞作品"Bean Cake"(「おはぎ」デイヴィッド・グリーンスパン監督)の原作です。


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